作品紹介(2023年)
『僕はレビュー作家として、この戦争も見て来ます』
昭和初期、エノケン(榎本健一)率いる劇団ピエール・ブリヤントの座付作家であった菊谷栄は、ある日突然、劇場から姿を消した。軍から招集を受け、地元・青森に戻ったのだ。
劇団員は、借りたレコードや預かった台本、手紙・メッセージ等を確実に菊谷に届けるために、同市出身で新人の北乃祭に青森行きを命じる。祭が届ける、その伝令とは――?
【 解 説 】
昭和初期、浅草の劇場街で活躍したレビュー作家・菊谷栄(本名・栄蔵)。
昭和12年に徴兵を受け中華民国で戦死した彼が生きていたら、日本のミュージカルは30年早く進歩しただろうと言われている。
扉座主宰・横内謙介は1994年、都政施行50周年記念公演に『モダンボーイズ 洒落男たち』として菊谷栄と、レビュー小屋の人々の姿を青春群像劇として書き下ろしている。
それから24年を経て、劇作家として成熟した視線と技術で、その時代を颯爽と駆け抜けながら、無念のうちに仲間たちと別れて戦死を遂げた、舞台人・菊谷の魂を新作として新たに描く。