作品紹介(2023年)
【あらすじ】
アルプス山脈が一望できるリゾート地、シャモニー郊外。 新妻のエリザベートが旅先の山荘から失踪してしまう。
警察の捜査でも手がかりは無く、憔悴する夫のダニエル。
数日後、近隣の神父がエリザベートを連れ帰るのだが、それは会ったこともない女だった……。
正体不明の神父とエリザベート、混乱する警部……、追い込まれていくダニエル。
果たして真実は誰が語っているのか!?
【劇団メッセージより抜粋】
今回皆さまに迎えていただく『罠』は、フランスの劇作家ロベール・トマによって一九六〇年に書かれたサスペンス・ドラマの決定版です。
巨匠ヒッチコックが、このお芝居が公演されるやいなやすぐに映画化権を買い取った、という逸話も残っております。
「サスペンス」のそもそもの語源は「サスペンド」=「宙づり」だそうです。幕開けから驚愕の結末まで、謎が謎をよび、宙づりどころかジェットコースターのようにグイグイ皆さまを翻弄し続ける大変面白い作品です。
とにかく、セリフのひと言ひと言。俳優の表情やしぐさ。舞台装置、小道具、衣裳、照明、音響。幕切れまでどうぞ油断せず、すべてにご注目ください。果たしてあなたはこの驚愕の結末、見破ることが出来るか!
そしてもし見破っても、結末は絶対に誰にも言わないでください!
例会当日、皆さまにお目にかかるのを楽しみにしております!
俳優座劇場 宮澤一彦
【あらすじ】
埼玉県の一軒家に住む小須田家。夫は15年前に蒸発したまま音沙汰がなく、息子と娘は独立したため、今は姑と二人で暮らしている嫁の咲(さき)。咲はいつだって笑顔を絶やさなかった。時として子供たちにも理解できないほどにいつも笑顔だった。
今日は咲の還暦の誕生日。しかし高齢の姑が倒れて意識不明となりそれどころではない。心配した子供たち、そしてどこかで聞きつけた夫が帰宅し、皮肉にも久しぶりに家族全員が集まった。
父の無事を喜ぶ母に対し、嫌悪感丸出しの子供たち。平穏だった家族の関係が一気にゆがみ始め、太陽のような咲の笑顔のヴェールに包まれていた、それぞれの思いが露呈していくのであった―。
【解説】
2020年3月に還暦を迎えた女優の熊谷真実さん。年齢を全く感じさせない美しさと華やかさがあるが、実は個性豊かな家族の中で育ち、小さい頃はいじめられっ子だったりと、印象とは反対側にある様々な葛藤の中で生きてきた過去がある。還暦を機に自分の人生を反映させた物語を、敬愛する作・演出家の田村孝裕氏の手によって作品にしたいと強く願い、今回の企画が立ち上がった。
女性の台詞に定評があり、出演を熱望する女優が大変多いことで知られる田村氏により、明るさの裏でもがき苦しんだ女性の、人生の軌跡を描く。
『僕はレビュー作家として、この戦争も見て来ます』
昭和初期、エノケン(榎本健一)率いる劇団ピエール・ブリヤントの座付作家であった菊谷栄は、ある日突然、劇場から姿を消した。軍から招集を受け、地元・青森に戻ったのだ。
劇団員は、借りたレコードや預かった台本、手紙・メッセージ等を確実に菊谷に届けるために、同市出身で新人の北乃祭に青森行きを命じる。祭が届ける、その伝令とは――?
【 解 説 】
昭和初期、浅草の劇場街で活躍したレビュー作家・菊谷栄(本名・栄蔵)。
昭和12年に徴兵を受け中華民国で戦死した彼が生きていたら、日本のミュージカルは30年早く進歩しただろうと言われている。
扉座主宰・横内謙介は1994年、都政施行50周年記念公演に『モダンボーイズ 洒落男たち』として菊谷栄と、レビュー小屋の人々の姿を青春群像劇として書き下ろしている。
それから24年を経て、劇作家として成熟した視線と技術で、その時代を颯爽と駆け抜けながら、無念のうちに仲間たちと別れて戦死を遂げた、舞台人・菊谷の魂を新作として新たに描く。